A11 無香料の方が安全なのですか?
どのようにして無香料処方が生まれてきたのか、振りかえってみましょう。 一方、香料はリラックスさせてくれる効果もあり、化粧品にとって心理的に重要な要素ですから上手く生かして行くのも良いと思います。
1 少しでも刺激を避けるための無香料
植物は、森林浴で知られるフィトンチッドなどの芳香物質をからだから出して、他の生物に信号を送っている。「フィトン」は「植物」「チッド」は「殺す」の意味で、微生物など、自分に害を与える恐れがある敵から動くことができないわが身をまもるためにつくり出す防御物質である。と解説されています。(*1)
これは一例ですが、天然にはいいろいろ香りがあって、目的も異なりますが、その成分は複雑で、時には数百種類にも及びます。
あまりにも種類が多いので、ある成分が人によってはアレルギーを起こすことがあります。
アレルギーを起こす物質は微量でも、影響することがありますし、大半の方に問題がない成分でも特定の方には刺激となることがあるので厄介です。この問題を避けるためには無香料にするのが最も確実なので選ばれます。
2 好みとしての無香料
もともと無香料がお好きであったり、最近は香料の強い製品が多すぎるので逆に無香料を要望される方も多くおられます。
この場合は1の問題も自然になくなりますので好都合です。
3 無香料にできる背景
以前は原料の臭い(石けん臭いもので、基材臭といいます)があったので逆に香りを入れることもありました。
最近は精製技術も進歩して基材臭も気にならない範囲となり、技術的にも無香料にしやすい環境ができました。
しかし、市販の汎用品に使われている高級アルコール系界面活性剤を使う場合はまだ無香料にするのは難しいようです。
4 香りを楽しむための無香料
最近は香りを積極的に利用される方が増えてきましたので、体質、体調、お好みに合わせてお使いになられます。
その意味ではシャンプー自体は無香料の方が選択の巾が広がる利点もあります。
5 香りのある「無香料」?!
最近はアロマテラピーブームのせいでしょうか、無香料の表示であっても、実際には相当香りのするものもあり、お客様も選択に困られるのではないかと思います。
「香料は一切含んでいませんが、中身の天然成分がほのかに香り気分リフレッシュ。」と説明され、全成分表示では、オレンジ油、ラベンダー油(一般的配合目的は「精油」)と書かれています。
一般的には精油(エッセンシャルオイル)は香料と考えられていますので、ますますわかりにくくなります。
いずれにしても、お好みの世界のことですから、時には香りを楽しまれるのも良いと思います。
ただ、アロマテラピーという言葉が氾濫していますので、安易に宣伝に流されないことも必要です。
アロマテラピーは芳香療法といわれるように香りの持つ良い面も危険な面も充分知った上で医療に応用しようと生まれた技術ですから、専門的知識を必要とします。その点、最近はアロマテラピーを基礎的に勉強されるお客様が増えてきたのは頼もしいことです。
- 参考資料
- *1 中村祥二著 香りの世界をさぐる 朝日新聞社