お肌の?(クエスチョン)

A9 天然系とはなんですか?本当に安全なのですか?

1 天然系とは何ですか?

「天然成分から作った〇〇…」、「100%天然成分…」などと宣伝に使われますが、天然物自体だけでシャンプーを作ることはできません。天然と言う言葉が出てきた時は、広く天然系と考えた方が良いでしょう。
天然系と言われるものは次のように分類されます

(1)天然物を原料として反応した化合物
石けんを始めとして、シャンプーに使われる洗浄成分(界面活性剤)がこれに該当します
(2)天然物と同一の化合物を化学合成または微生物を利用して大量生産した化合物
例としては、ヒアルロン酸、トレハロース、ヒノキチオールなどがあります。化学組成が同一であっても、天然にこだわるメーカーもあります。私は天然物にこだわらず、環境保護の面から考えて、化学合成、微生物合成をおおいに活用すべきだと思います。
(3)天然物から特定の成分を取り出した化合物
例としてはベタイン(化学名:トリメチルグリシン)、グリチルリチン酸カリなどがあります。
(4)天然物から抽出した化合物
例えば、しそエキスなど数多くあります。

この4項目に該当するものを時に応じて使いわけたものを天然系と言います。部分的に配合したものでも天然系を謳っていることもあるので、紛らわしいですね。

2 天然系なら安全なのでしょうか?

天然物だから安全とは勿論いいきれませんが、“天然物には毒物もあるので、天然物は安全というのはナンセンス”と決めつけるのもまた極論と思います。今でも多くの方が天然物に安心感を持っておられるのは確かですから、その気持ちは生かした方が良いと思います。化粧品にとっては心理的効果も重要な要素の一つです。自然、人、安全の関係をどのように考えたらわかりやすいのでしょうか?

(1)自然に潜む危険性
(a)自然の香り
植物は、森林浴で知られるフィトン(植物の意味)チッド(殺すの意味)などの芳香物質をからだから出して、他の生物に信号を送り、自らを護っていると考えられます。(*1)一般に香りは数百種類の化学物質から成立っており、その中には相手にとっては害になる物質を含むこともあると考えて良いでしょう。
(b)植物と草食動物
危険と隣り合わせの植物を食べながら、何故草食動物は生残って行けるのでしょうか?
有害物は概して苦味を持ったものが多く、動物は口に入れたときに、不快で吐き出したくなることで、有害物質を飲み込むことを防いでいると考えられています。(*1)
動物は香りや苦味で本能的に安全を確保してきました。
(2)天然物利用の経過
このように自然には危険なものが数多くありますが、人はある時は本能的に、ある時は長い間の経験と知識から“生活の知恵”として天然物を活用してきたと言えます。
“良薬口に苦し”、“毒にも薬にもなる”はこの間の経験則として実に上手く表現しています。
人が香りを使い始めたのは4万6千年前、石けんを使い始めたのは今から4千年前と言われますから、その間、膨大なデータの積重ねがあります。一つ一つのデータは曖昧なものが多いと思いますが、圧倒的な数が精度の向上に寄与しています。さらに精製したり、複合化することにより、より安全なものを求めてきました。漢方にしろ、アロマテラピーにしろ、永い経験を通して技術を確立して来たことを知っておく必要があります。
この基本が守られていれば、天然系は安全と言うことができます。このことを忘れ、天然物を安易に利用すると危険である例として、最近話題になった「イチョウ葉食品」の記事を下段に載せました。(*2)
天然物であるからと言って盲信しないことです。
(3)天然系の活用
天然系について多くの方が安心感を持っておられることは確かなので、天然系と言う言葉を使う以上、その期待に答えられるような配合設計が望まれます
過去の経験に加え、今日では合成技術、精製技術、分析技術も進歩していますので、安全データの揃った素材を使って、より良いものを作って行きたいものです。
その意味では天然系の(4)天然物にこだわらず、天然系の(1)、(2)、(3)を積極的に活用して行くのが良いと思います。
(4)天然物は上記のような危険も含みますので、低刺激、低アレルギーを追究する場合は配合素材の数を減らしたシンプルなものが良いと思います。

参考資料
*1 中村祥二著香りの世界をさぐる朝日新聞社
*2 日本経済新聞2002..11.26.の記事「イチョウ葉食品でアレルギーも」

要旨:葉のエキスは、脳の血液循環などの改善効果があり、ドイツなどではアルツハイマー型痴ほうなどの治療に使用。ただ、アレルギー物質の「ギンコール酸」を含むので、これを除かないと皮膚障害、消化器障害などを起こす。20銘柄中12銘柄からギンコール酸が検出された。

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